目次
はじめに
企業が成長を続けるためには、適切な財務戦略が不可欠です。財務戦略は、収益性や資金繰り、資本政策など、さまざまな側面から企業の財務健全性を確保し、持続的な発展を後押しするものです。本記事では、成長企業が採用する財務戦略のトップ10を紹介します。
キャッシュフロー管理の徹底
健全な財務基盤を確立するためには、キャッシュフロー管理が欠かせません。成長企業は、以下の点に留意しながらキャッシュフロー管理を徹底しています。
月次の収支予測の実施
成長企業は、月次でキャッシュフロー予測を行うことで、資金需要を的確に把握しています。営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローを分析し、資金ショートの可能性を事前に察知します。
このように、細かいキャッシュフロー管理を行うことで、突発的な資金不足に見舞われるリスクを回避できます。資金需要に対して、適切な資金調達を計画的に実行することが可能になります。
運転資金の効率化
成長企業は、在庫回転率の向上や営業債権の圧縮などを通じて、運転資金の効率化に取り組んでいます。運転資金が過剰になると、手元資金が過大となり、資金効率が悪化します。一方で運転資金が不足すると、支払い能力が低下します。
そのため、適正な在庫水準の維持や債権回収サイクルの短縮化などを図り、過剰な運転資金を抑制しつつ、十分な運転資金を確保することが重要です。CCCなどの指標を活用しながら、バランスの取れた運転資金管理を行います。
資金調達力の強化
成長を続けるためには、十分な資金を調達できる力が不可欠です。成長企業は、以下の点に注力し、資金調達力の強化を図っています。
金融機関との関係構築
成長企業は、複数の金融機関と良好な関係を構築することで、資金調達における選択肢を広げています。メインバンク以外の金融機関とも積極的に取引を行い、情報を開示することで、相互の理解を深めます。
また、事業計画や財務情報を分かりやすく説明し、自社の成長性を適切に伝えることが重要です。金融機関の理解が得られれば、有利な条件での資金調達が可能になります。
多様な資金調達手段の活用
成長企業は、銀行借入だけでなく、社債やエクイティファイナンスなど、様々な資金調達手段を組み合わせて活用しています。資金使途や調達額、返済期間などに応じて、最適な調達手段を選択します。
特に、エクイティファイナンスは、将来の成長余力を評価してもらえるため、成長企業に適した調達手段と言えます。自社の成長ステージに合わせて、バランスの取れた資金調達を行うことが肝心です。
成長投資の最適化
財務戦略の要諦は、効果的な成長投資を実行することです。成長企業は、以下の点に留意しながら、成長投資の最適化を図っています。
事業ポートフォリオの最適化
成長企業は、幅広い事業領域に投資を行いながら、ポートフォリオの最適化を図っています。高成長が期待できる有望事業に経営資源を重点的に投下し、成長の柱を育てます。一方で、将来性の乏しい事業は積極的に撤退し、経営資源の入れ替えを進めます。
このようなポートフォリオ・リストラクチャリングを通じて、限られた経営資源を有効活用し、企業価値の最大化を目指します。
リスク分散と期待リターンの最大化
成長企業は、単一事業への過度な集中を避け、リスク分散を意識した投資を行っています。複数の有望事業に投資することで、リスクを分散させます。一方で、高い期待リターンが見込める案件には、積極的に経営資源を投入します。
リスクとリターンのバランスを考慮しながら、安定成長と高成長の両立を目指す投資戦略が採用されています。定量的な分析に基づき、ポートフォリオ全体のリスク・リターン最適化を図ります。
株主還元の最適化
企業価値を高め、株主からの支持を得るためには、適切な株主還元策が不可欠です。成長企業は、以下の点に注目しながら、株主還元の最適化を目指しています。
資本コストを意識した還元水準の設定
成長企業は、資本コストを十分に意識しながら、株主還元水準を決定しています。自己資本コストを下回る水準に還元率を抑えれば、 企業価値は毀損されます。一方で、過度に還元を控えると、フリーキャッシュフローが滞留し、企業価値向上の機会を逸することになります。
このため、成長企業は、事業計画や投資計画を考慮しつつ、適正な自己資本コストを算定し、それ以上の水準で株主還元を実施することを心がけています。
安定的な配当と機動的な自社株買いの組み合わせ
成長企業は、安定的な配当の維持と機動的な自社株買いを組み合わせることで、効果的な株主還元を実現しています。配当については、一定水準を下回らないよう留意しつつ、業績連動型の仕組みを取り入れるなど、弾力的な運用を行います。
一方、自社株買いは、タイミングを見計らって機動的に実施します。株価が適正水準を下回っている場合などに、積極的に自社株を取得し、株主価値の向上を図ります。
資本効率の向上
成長を持続するには、限られた経営資源を最大限に活用し、高い資本効率を実現することが求められます。成長企業は、以下の取り組みを通じて、資本効率の向上に努めています。
ROIC・ROEなどの重視
成長企業は、投下資本に対する収益力を示すROIC(投下資本利益率)やROE(自己資本利益率)など、資本効率性を表す指標を重視しています。これらの指標を経営目標に掲げ、全社的に資本効率向上への意識を高めています。
部門別や事業別にROICなどを算出し、経営資源の入れ替えを進めたり、低収益事業からの撤退を検討するなど、具体的な施策を講じています。
政策保有株式の縮減や有効活用
成長企業は、政策保有株式の見直しを進めています。保有意義が希薄化した株式は売却し、資本効率を高めます。一方で、保有する必要性が高い株式については、積極的に議決権行使を行うなど、有効活用を図ることで企業価値向上につなげています。
株主からの資本コスト意識の高まりを受け、政策保有株式の抜本的な見直しに取り組む企業が増えています。
まとめ
成長企業が採用する財務戦略は多岐にわたりますが、共通するのは、企業価値の最大化と持続的な成長の実現を目指している点です。キャッシュフロー管理の徹底や資金調達力の強化、成長投資の最適化、株主還元と資本効率の向上など、様々な取り組みが行われています。
今後、さらに厳しい競争環境が予想される中で、成長企業は、効果的な財務戦略の立案と遂行が一層重要になってくるでしょう。不断の努力を重ねながら、持続的な成長の実現を目指す必要があります。